ロマノフ王朝。皇后アレクサンドラの弱い心に巧みに入り込み、宮廷を牛耳り次第に政治的発言権を増し、そして破滅へと導いたとされる実在した修道僧、ラスプーチンの伝記ドラマです。
生き残った皇女アナスタシアの話だの、ロマノフ王朝の遺産だの、最後の皇帝とその家族の遺体が発見されただの、話題性もドラマ性も高い歴史の中の一ページです。
このラスプーチンという人物は、どうもはっきりしないのです。多くの歴史的事実にあることですが、小説や映画にたくさんなっているために、何が事実なんだかよくわかりません。
唯一の男児アレクセイが血友病に生まれ、自身の出自であるドイツとロシアの一触触発状態であったために、心身ともに弱っている皇后アレクサンドラの元に“奇跡が起こせる修道僧”ラスプーチンが聖母に導かれたとして現れます。
ばっちいし、品はないし、やらしいし(笑)・・・見かけは神秘のかけらも感じなさそうな生臭坊主。演じているのはアラン・リックマン。やっぱりあの声かなぁ、口を開くとなんか取り込まれちゃうんですよね・・・(不自然なロシア訛の英語はちょっと難ありですが)。
事実はともかくとして(わからないし)・・・皇太子の病を治したので皇后の寵愛を受け、宮廷の女性たちを虜にし、そして堕落させていくというのがラスプーチンの定説ですが、この作品のラスプーチンは幼少の頃から確かに“力”があるのです。顔を見るだけで、その人の悩みやその背景を当てたりしてしまうような。
政治的野心があって皇帝一家に近づいた風には描かれておらず、ただ聖母様の導きによって皇太子の病を治そうとし、神に近づきたい女性たちとベッドを共にして(皇后には指は触れてない風だけど)、彼の威勢を恐れる皇帝の側近たちに煙たがられる・・・政治に口を出し、大ロシア帝国を崩壊に導いてしまったというよりも、ラスプーチンがいなくなったが為に崩壊していった感じです。
結局、追放先から戻っても、「涙と血におぼれる」ロシアを救うことはできませんでしたが、それでも皇后と皇太子の心のよりどころであったのは間違いなく・・・でも、音声テープで血が止まるならば、ラスプーチンは必要ないのでは、なんて思ったりして(笑)。
1996年のエミー賞で主演男優賞、女優賞、撮影賞を受賞した秀作ですが、アランは勿論のこと皇帝を演じたイアン・マッケランもすばらしいです。
妻や子供たちがラスプーチンと仲良くしているのに比べ、そんな家族を心配して、ラスプーチンを遠ざけようとした皇帝は、重厚でノーブルで家庭的な雰囲気で、「やっぱり帝国崩壊はラスプーチンのせい?」って思わせる説得力がまたあるんですよね。なんか可愛らしいし(笑)。
豪華な衣装や舞台装置もすばらしく、皇太子アレクセイのナレーションも、物悲しさを誘っていて良いです。流石にラストシーンは涙が出たなぁ・・・。
以下ネタばれ 反転してご覧ください
最後には聖母の声を聞けなくなり(でも予言はしている)、狂人扱いされた上に命を狙われるラスプーチン。どんなに祝福を受けていても、神がかっていても、人間だから死はやってきます・・・かなりしぶといですが。
本当に即死するような毒を盛られても死なず、致命傷になりそうな銃弾を受けてもなお塀を越えようとし、命中5発でやっと絶命したんでしょうか。おそるべし・・・。
150604 |